2011年7月18日月曜日

ラミクタールについて②


さすがに1割の患者さんに薬疹が出る治験薬では、今の日本で認可にならない状況でした。厚生労働省の治験方法がコロコロと変わる時期で、他のてんかん治験薬も認可にかなりの時間を要していました。しかし、欧州と米国ではすぐにラモトリギンが販売開始となり、国際抗てんかん連盟(ILAE)学会誌の裏面に大きな広告となって毎号掲載されるため、われわれ専門医は長い間、複雑な思いでこれを見続けることとなります。

その後、10年近くが経過したある日、製薬会社の学術担当であった従兄弟から電話がかかってきました。一部のてんかんで第一選択になりつつあり、世界的に大きな市場を確立しつつあるラモトリギンが、なぜ日本で売られていないのかと言うのです。日本で認可されていない多くのてんかん薬が既に中国、東南アジアで販売されていることを、静岡てんかんセンターに技術研修に来ている中国、東南アジアからの研修医に聞いているような状況でしたので、日本でもラモトリギン販売が近い事が予測できました。

欧州ではラモトリギン販売直後、やはり多くのアレルギー反応が起きていたらしく、少ない投与量から使う方法が推奨されるようになりました。高、中、低3種類の初期投与量からの段階的投与が試みられ、最も低容量からの段階的増量が、統計学的に副作用の出現が最も少ないという結果に達したためです。この最も少ない投与方法が現在の標準的使用方法となりました。しかし、3種類の比較データで最も初期投与量が少ないものが最も安全だったというだけで、この投与方法よりもっと初期投与量が少なければもっと副作用が少ないのではないかという疑問が残ります。

日本で販売されて2年半が経過した現在、てんかんセンターでも既に数百例に使用され、現在の投与方法をきちんと守れば、かつて心配したほどアレルギー反応が出現しないことが分かってきました。しかし、それでは副作用は全くなかったかと言うと、残念ながら途中で使えなくなる人がいるのです。